2025年11月25日
スタッフブログ
みなさん、こんにちは。
MonoHousing早川建設の伊藤です。
先日松戸に行く機会があったのですが、その際に松戸の名所『戸定邸(とじょうてい)』に行って素晴らしかったので、ご紹介したいと思います。
『戸定邸』とは、江戸幕府15代将軍徳川慶喜の弟で、水戸藩最後の藩主・徳川昭武が、明治時代に建てた邸宅です。
徳川家の住まいがほぼ完全に残る唯一の建物だそうで、歴史的価値が高く貴重なものなのだとか。
明治期に建てられた、なんと140年以上前の木造住宅がほぼ当時に近い姿で残っているのですから、驚きです!
ちなみに、「戸定」というのはこのあたりの地名に由来しているそうですよ。
興奮しすぎて写真を撮り忘れたので、今回はストックフォトで雰囲気をお伝えしますが、松戸市のサイトには『VRツアー』が用意されています。
室内やお庭を360度見ることができるので、興味を持たれた方はぜひご覧ください。
さて、訪問したのは11月の平日ということもあって人もまばらで、ボランティアガイドの方からゆっくり説明を伺うことができました。
この解説のおかげで、理解が深まって非常に楽しめました!
もし戸定邸に行かれることがあったら、ぜひボランティアガイドさんのお話を聞かれることをおすすめします!
まず表玄関から入ってまっすぐ進むと、戸定邸でいちばん格式の高い部屋、表座敷の客間があります。

お殿様の屋敷というと豪華なものを想像していましたが、書院作りで華美な装飾はなく、現代にも通じるシンプルな美しさを感じます。

シンプルとはいえ、ところどころに徳川家の家紋である葵をあしらったデザインがみられます。
釘隠しや引手は葵の葉を4枚使ったデザイン、欄間は2枚葉の葵がモチーフにになっていて、「うーん、控えめでおしゃれ!」って感じ。
ちなみに戸定邸の釘隠しは、本当に釘を隠すためではなく、あくまで装飾としてつけられているそうです。



また使っている木材は厳選されたもののようで、柱は四面すべてが柾目になった四方柾が何本も使われていたり、引き戸も大きな1枚板を使ったり、12m以上の長い梁も継ぎ目のない1本の木を使っていたり、質の高い木材を使って作られているそうです。
一見簡素な作りでも、高級な材料を使っていることで質感が高くなり、建物が長く存続することにも影響していると思います。
客間の窓の外には広大な庭が広がっているんですが、眺めていると「この庭は和洋折衷なんですよ」とガイドさん。
お話を聞くと、一面芝生に覆われた起伏のある地面,丸く刈り込んだ植木、石灯籠を置かない洋風な作りと、松などの日本らしい庭木との組み合わせで、明治以降に増える和洋折衷の庭の先駆けだそうです。
客間からいかに庭が美しく見えるかを計算されているようで、戸定邸の中心はこの庭なんだなぁということがよくわかります。


客間からはお天気が良いと富士山も見えるそうですが、「いまはマンションと鉄塔が建って隠れてしまったんです」とのこと。
戸定邸ができたころは高い建物もなく、きっと素晴らしい眺めだったんでしょうね。

さて、客間から奥に進んでみましょう。
客間の北側には、昭武が書斎として使っていた部屋が続いています。
本来の大名屋敷では、客間と主人が過ごす部屋は別棟に離して作られていたそうですが、明治という時代と昭武の合理的な考えから客間と隣り合わせになったのでしょうか。
客間と違い、部屋の四隅に蚊帳を吊るために金具がついています。そういえば昔祖父母の家では蚊帳を吊っていたなぁと思い出しました。
その金具に昭武は蚊帳ではなく、ハンモックを吊って寛いでいたそうで、現代の人に通じる感覚のようで面白いですね。
昭武が書斎として使っていた部屋の棚の戸はとても変わった木目で、ガイドさんによると屋久杉の特徴的な木目だそうです。
こんなところにも拘りを感じられますね。

さらに奥に進むと家族の居室があります。
釘隠しや欄間もなくなり、だんだんとより簡素になっていくのが比較をすると面白いです。
現代の感覚で見ると、装飾が少ない部屋も、それはそれでシンプルで美しい!とも感じます。
そして特筆すべきは湯殿(お風呂場)!
いまは後に作られた小さい湯船がありますが、もとは湯船はなく隣の台所から湯を運んで、お付の方が体を拭くような使い方だったそうです。
床が石張りのようになっているのですが、ガイドさん曰く、石ではなく建立当時に最先端だったセメントを使ったそうです。
当時は石よりも高級品だったとのことですが、セメントを使うのがステイタスだったそう。
玄関脇にある内蔵のところでも、洗い出しのセメントが使われていて、こだわりが感じられます。
天井は一枚ものの杉板が使わていて、真ん中は網代組という杉板を編んだ仕上げで、通気できるようになっているそうです。
杉板はおそらく当時のものだそうですが、一部シミになっているとのころはありますが、カビもなく非常にきれいな状態で驚きました。

このほかにも、昭武の母が過ごした離れや、来客の供の者が控えた「使者の間」など見どころはまだまだありますが、きりがないのでこのあたりで。
たまたま訪れた戸定邸でしたが、とても良い体験となりました。
140年以上前の建物が美しいと感じるのは、人の心に響く美しさのバランスは変わらないところもあるのだな、と感じました。
同じ希少な材を使って、同じ手間をかけて家を作ることはいまは不可能かもしれませんが、こういった古い建物を参考にして、今の時代に合った快適で美しい建物を作ることは可能なのでは、なんて考えました。
ちなみに建物の中は外よりも寒いくらいで、快適さはいまの家と比べようもなかったです。
興味を持たれた方は、ぜひ戸定邸を訪れてみてください。
おすすめです。