2026年2月28日
コラム
近年、地震への備えとして建物の耐震性がますます注目されています。
しかし、すべての建物が現在の安全基準を満たしているわけではありません。
特に、古い基準で建てられた建物や、特定の条件に当てはまる住宅など、「耐震基準を満たしていない建物」は、いざという時に大きなリスクを伴う可能性があります。
今回は、どのような建物が該当し、なぜ問題となるのか、そしてどう対策すればよいのかを解説します。
まず、どのような建物が「耐震基準を満たしていない」と判断されるのでしょうか。
これは主に、現行の耐震基準である「2000年基準」を満たしていない建物を指します。
日本の建築基準は、過去の大地震の教訓から度々見直されてきました。
1981年6月1日以降に適用された「新耐震基準」では、震度6強から7程度の地震で倒壊・崩壊しないことが求められました。
しかし、1995年の阪神・淡路大震災で多くの木造住宅が倒壊したことを受け、より安全性を高めるため2000年6月1日に基準が改正され、「2000年基準」が導入されました。
この基準では、地盤に応じた基礎の設計、接合部への金具の取り付け、耐力壁のバランス強化などが具体的に定められています。
そのため、2000年6月1日以降に建築確認が行われた建物は、原則として現行の2000年基準に準拠しています。
一方で、1981年6月1日から2000年5月31日までの間に建築確認を受けた建物、特に木造住宅には注意が必要です。
これらは「新耐震基準」は満たしていても、2000年基準の細かな規定(特に接合部や耐力壁のバランスなど)を満たしていない場合があり、「グレーゾーン住宅」と呼ばれることがあります。
2016年の熊本地震などでも、このグレーゾーン住宅での被害が報告されています。
さらに、1981年5月31日以前に建築確認が行われた建物は、「旧耐震基準」に基づいています。
旧耐震基準では、震度5強程度の揺れで建物がほとんど損傷しないことが目標とされており、現代の基準と比較すると耐震性は大きく劣ります。
これらの基準に適合しているかを確認するには、建物の建築確認通知書に記載されている建築確認日などを調べるのが一般的です。

耐震基準を満たさない建物での生活や所有には、どのようなリスクがあるのでしょうか。
まず、所有者には損害賠償責任が生じる可能性があります。
民法第717条では、建物に瑕疵(欠陥)があり、それが原因で他人に損害を与えた場合、建物の所有者がその責任を負うことが定められています。
地震による建物の倒壊や損壊で、入居者や近隣住民が負傷したり、財産に損害が出たりした場合、所有者は損害賠償責任を問われるケースがあります。
ただし、地震が不可抗力と判断される極めて稀なケースでは、責任が免除されることもあります。
次に、建物自体の倒壊や損壊のリスクが格段に高まります。
過去の大きな地震では、旧耐震基準の建物や、場合によっては新耐震基準でも基準を満たさない建物が倒壊・損壊し、多くの犠牲者を出しました。
特に、「グレーゾーン住宅」とされる建物も、大規模地震に対して十分な安全性が確保されていない可能性があります。
これらのリスクは、建物内にいる居住者だけでなく、周辺の建物や通行人といった近隣住民にも及ぶ恐れがあります。
地震発生時の被害を最小限に抑えるためには、建物の耐震性が非常に重要となります。

では、耐震基準を満たさない建物に住んでいる、あるいは所有している場合、どのような対策が考えられるでしょうか。
第一に、建物の現状を正確に把握するために「耐震診断」を受けることが推奨されます。
耐震診断では、専門家が建物の構造などを調査し、地震発生時の倒壊や損壊のリスクを評価します。
自治体によっては、耐震診断の費用補助や無料診断を実施している場合もあるため、確認してみると良いでしょう。
診断の結果、耐震性に問題があると判明した場合は、「耐震補強」や「建て替え」によって建物の安全性を高めることが必要です。
耐震補強リフォームでは、基礎の強化、柱や梁の接合部の補強、壁の増設など、建物の構造に合わせて様々な方法があります。
建物の老朽化が進んでいる場合や、大幅な耐震性向上が見込めない場合は、思い切って建て替えることも選択肢の一つとなります。
また、中古物件を購入する際には、その建物が現在の耐震基準に適合しているか、事前にしっかりと確認することが不可欠です。
購入を検討している物件の建築確認通知書などを確認し、適合状況を把握しておきましょう。
既存不適格建築物や違法建築物についても注意が必要です。
「耐震基準を満たしていない建物」とは、主に2000年以降に定められた現行の耐震基準を満たさない建物を指し、1981年以前の旧耐震基準の建物や、新耐震基準でも2000年基準に満たない「グレーゾーン住宅」などが該当します。
このような建物は、地震発生時に倒壊・損壊するリスクが高く、所有者には損害賠償責任が生じる可能性もあります。
居住者や近隣住民の安全を守るためには、まずは耐震診断で現状を把握し、必要に応じて耐震補強や建て替えといった対策を講じることが重要です。
中古物件購入時にも、適合状況の確認は必須となります。